トリミングサロンの電話は、施術中にいちばん鳴ります。犬を台に乗せてハサミを持っている最中に、受話器は取れません。
ただ、その電話の中身をよく見ると「予約を取りたい」ばかりではありません。「うちの子はいくらになりますか」「何時間くらい預かりますか」「初めてなんですが何が必要ですか」。予約する前の確認が、かなりの割合を占めます。
この記事では、その予約の手前の質問をチャットボットに任せる方法と、任せてはいけない線引きをまとめます。任せるのはカットの腕ではなく、カットの手前の説明です。
トリミングサロンの電話は「予約したい」より手前で鳴っている
中小機構のJ-Net21が2023年11月に実施した調査(全国の20代〜60代以上の男女1,000人)では、ペット美容院を利用しない理由として「自分でできるため必要性を感じない」が4.6%、「価格が高い」が4.0%、「何をしてもらえるかわからない」が2.3%と並びました。ペットを飼っていない人も含む全体での数字なので割合は小さく出ていますが、順番に意味があります。
飼い主が足踏みする理由は、腕前への疑いではありません。いくらかかるのか、何をしてもらえるのかが分からないことです。
しかもトリミングの料金は、ホームページに一律では書けません。犬種、体重、毛量、毛玉の有無で変わるからです。料金表に「小型犬 ○○円〜」と書くほど、飼い主は「うちの子はどこに入るのか」を確かめたくなります。その確認先が、電話になります。
施術中に電話へ出られないのは、忙しいからではない
台の上に犬を乗せている間、手は離せません。シャンプーの途中も同じです。忙しくて後回しにしているのではなく、離れること自体が危ないから離れられません。
理由が安全にある以上、「頑張って出る」は解決策になりません。留守番電話に切り替えても、折り返す時間は施術のあとにしか作れません。
出られなかった電話は、かけ直してもらえるとは限らない
カスタマーサポートツールのTayoriが2025年に公表した調査では、問い合わせをしようとして実際にはしなかった人が43.7%いました。理由の最多は「営業時間外だった」で19.0%です。
楽天コミュニケーションズが2023年10月に発表した中小企業の電話対応調査(社員6〜300人の企業に勤める課長補佐以上500人)では、電話対応に課題があると答えた人が64.4%。中身は「折り返しの電話が多い」26.7%、「電話を対応する人がいない」19.5%、「電話の内容が記録に残らない」16.1%の順でした。
環境省の統計によると、動物を預かる「保管」業として登録されている事業所は全国で31,629件あります(令和6年4月1日現在)。トリミングサロンやペットホテルがここに含まれます。近所に別の選択肢がある以上、繋がらなかった飼い主はそのまま次の店を調べます。電話対応そのものを減らす方法は、業種を問わず同じ考え方で整理できます。
チャットボットに任せられるのは「カットの手前」
予約の前に聞かれる質問は、店ごとに決まっています。決まっているのに毎回声で説明しているところが、そのまま自動化できる部分です。
- 料金の目安と、金額が変わる条件(犬種・体重・毛量・毛玉の状態)
- 所要時間と、お預かりから引き渡しまでの流れ
- 対応できる犬種・体重の上限、猫を受けているかどうか
- 初めての来店で必要なもの(ワクチン接種証明など)
- 営業時間、駐車場、支払い方法
- 空いている日時の確認と、予約の一次受付
ホームページの片隅に料金表を置いておくのとは、届き方が変わります。飼い主は表を読み解くのではなく、「トイプードルの全身カットはいくらですか」と聞いて答えを受け取ります。
LINEで予約を受けているサロンは、何が変わるのか
LINEで予約と連絡をまとめているサロンもあります。LINEヤフーの発表では、LINEの国内月間利用者数は2025年12月末時点で1億人を超えました(2026年1月29日発表)。すでに来店している飼い主とのやり取りは、LINEが速くて確実です。
役割が分かれるのは、その手前です。LINEでやり取りするには、まず友だち追加が要ります。ホームページを見ながら「この店でいくらかかるんだろう」と迷っている段階の人に、その一手間を求めることになります。
ホームページに置くチャットボットは、友だち追加なしでその場で答えます。初めての人の疑問はホームページ側で受け、来店後のやり取りはLINEで続ける。どちらかを選ぶ話ではなく、置き場所の違いです。
任せてはいけないのは「見てから決めること」
次の3つは、実物を見てからでないと決まりません。
- 毛玉やもつれの追加料金の確定
- 皮膚の状態、高齢犬、持病のある子を受けられるかの判断
- 仕上がりイメージのすり合わせ
見ずに金額を答えてしまうと、当日に「聞いていた話と違う」が起きます。ボットには「毛玉の状態によって追加になります。当日拝見してからお伝えします」まで答えさせて、判断は人が持ちます。命や体に関わる線引きの考え方は、動物病院での活用とも共通します。
「AIが勝手に答えてしまう」への備え
AI insideが2024年10月に発表した調査(生成AIの導入を担当する大企業の社員218人)では、技術面に不安があると答えた人の59.2%が「事実と異なる回答」を挙げ、最多でした。
トリミングの問い合わせは、金額と受け入れ可否の話です。AIが気を利かせて「大丈夫ですよ」と答えれば、当日に断ることになります。飼い主は犬を連れて来てしまっています。
そのためAI相談窓口botは、AIに答えを作文させません。お店が用意した答えの中から、質問に近いものを選んで返します。用意していない質問には答えを作らず、「確認してご連絡します」と伝えたうえで、その質問を記録します。
予約が入ったあとの「来なかった」を減らす
ORENDが2025年9月に発表した調査(首都圏の300人)では、5人に1人が無断キャンセルの経験ありと回答しました。理由の最多は「予約自体を忘れていた」です。
ソーシャルデータバンクが2023年10月に発表した調査(1,000人)では、57%が「リマインドで予約を思い出した」と答え、95.7%が「リマインドはあった方がよい」と答えています。
トリミングは1頭あたりの枠が長く、当日に空いても埋め直せません。前日の自動連絡と、都合が悪くなったときにすぐ伝えられる入り口を、セットで用意しておきます。リマインドの送り方と例文は別の記事にまとめています。
AI相談窓口botだと、こうなります
当社のAI相談窓口botをトリミングサロンで使うと、次のかたちになります。
- 料金の目安や受け入れ条件は、お店が用意した答えから選んで返すので、ウソの案内が出ません
- 答えられなかった質問は自動で集まり、毎朝メールで届きます。答えを足す作業はお店ご自身で行っていただく形で、追加費用はかかりません
- 予約はGoogleカレンダーがそのまま台帳になります。二重予約を防ぎ、前日にリマインドを自動送信し、キャンセルは確認画面つきの専用ページで受け付けます
- 予約フォームに聞きたいことを足せます。「犬種」「体重」「気になっている部分」などを設定シートに書いておくと入力欄が増え、答えはカレンダーの予定と確認メールに残ります(回答はすべて任意です)
- 設置はホームページにタグを1つ貼るだけ。スマホでもそのまま動きます
- 料金は初期費用50,000円、月額5,000円(いずれも税込)です
できないこともお伝えしておきます。鳴っている電話に代わりに出ることはできません。毛玉の追加料金を、見ずに判断することもできません。ボットができるのは、電話が鳴る前に答えを渡しておくところまでです。チャットボットの料金相場と比べたうえでご検討ください。
まとめ
トリミングサロンにかかってくる電話は、「予約したい」より手前の「うちの子はいくらですか」で鳴っています。そしてその時間帯、トリマーは犬から手を離せません。
任せるのはカットの腕ではなく、カットの手前の説明と、予約の一次受付です。見てから決まる毛玉の料金や受け入れ可否は、人が持ったままで構いません。この線引きさえ決めてしまえば、施術に集中したまま、取りこぼしだけを減らせます。