整骨院にかかってくる電話で多いのが「保険は使えますか」という質問です。施術中はベッドから手が離せません。鳴っているのは分かっていても、出られないまま切れてしまうことがあります。

先に結論を書きます。整骨院でチャットボットに任せられるのは、よくある質問への即答・予約の一次受付・営業時間外の受け皿の3つです。ただし「保険が使えるかどうか」の判断だけは任せてはいけません。健康保険の対象は骨折・脱臼・打撲・捻挫の4つに限られていて、答えはけがの原因で変わるからです。

施術中に出られなかった電話は、かけ直してもらえるとは限らない

院長がひとりで回している整骨院を思い浮かべてください。

施術中に電話が鳴ると、選択肢は2つしかありません。手を止めて出るか、出ないか。手を止めれば、いま施術を受けている患者さんの時間を削ることになります。出なければ、その1件は宙に浮きます。

問題は、そのあとです。Tayoriが2025年に行った調査では、問い合わせようとしたのに実際にはしなかった人が43.7%いました。理由でいちばん多かったのが「営業時間外だった」で19.0%です。連絡がつかなかった人が、あとでもう一度かけてくれるとは限らないということです。

院の数も見ておきます。厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によると、柔道整復の施術所は全国で50,924か所。2年前と比べて8か所しか増えていません。一方で柔道整復師は78,666人と、2年前より1,034人増えています。院はほぼ増えないまま、施術する人だけが増えているということです。

「保険は使えますか」に電話で即答できないのは、けがの原因で変わるから

この質問が厄介なのは、質問した本人にも答えが分からないからです。患者さんが言えるのは「腰が痛い」までで、それが保険の対象かどうかは原因次第です。

全国健康保険協会(協会けんぽ)は、柔道整復師の施術で健康保険が使える範囲をこう示しています。

  • 使える:骨折、脱臼、打撲、捻挫(肉離れを含む)の施術。原因のはっきりした外傷
  • 使えない:単なる肩こり、筋肉疲労、慰安目的のマッサージ代わりの利用
  • 使えない:神経痛・リウマチ・五十肩・関節炎・ヘルニアなど、病気からくる痛みやこり
  • 使えない:仕事中や通勤途中のけが。同じけがで病院にかかっている場合
  • 骨折と脱臼は、緊急の場合を除いて、あらかじめ医師の同意が必要

「腰が痛い」という一言では、このどれに当たるか決まりません。だから院長も電話で「使えます」とは言えないのです。答えを出すには、いつ・何をして痛めたのかを聞く必要があります。

この質問をAIに作文させると、使えない人に「使えます」と答えてしまう

チャットボットには、あらかじめ用意した答えから選んで返すものと、その場で文章を作って返すものがあります。後者は生成AIと呼ばれるタイプです。

文章を作るタイプは、答えを知らないときでも、それらしい文章を作ってしまいます。AI insideが2024年10月に行った調査でも、この点への不安がいちばん多く挙がりました。生成AIの技術面に不安があると答えた担当者のうち、59.2%が「事実と違う回答をすること」を挙げています

保険の質問では、この性質がそのまま事故になります。慢性的な肩こりの人に「保険が使えます」と返してしまえば、その人は保険証を持って来院します。窓口で「対象外です」と説明することになり、院の説明不足のように見えてしまいます。

避け方は単純で、ボットに答えを作らせないことです。院が用意した文章から選んで返す方式なら、書いていないことは口にしません。

保険の質問は「答えない」のではなく、答え方を先に決めておく

誤答が怖いからといって、この質問を素通りさせるのはもったいない話です。聞いてきた時点で、その人は来院を考えています。用意しておく答えは3行で足ります。

  1. 健康保険が使えるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫といった、原因のはっきりしたけがの施術です
  2. 肩こりや筋肉疲労、病気からくる痛みは保険の対象外となり、自費の施術になります
  3. どちらに当たるかは、はじめの問診で確認します。まずはご予約ください

事実を伝え、線引きを示し、次の行動を渡す。この形なら、うそをつかずに予約まで運べます。交通事故のけがのように院ごとの取り扱いが分かれる質問も、同じ作り方で「一度ご相談ください」に着地させられます。答えの作り方そのものは、よくある質問の作り方で手順にまとめています。

任せるのは施術ではなく、施術の外側にある3つの仕事

整骨院でボットに預けられる範囲は、はっきりしています。

  • よくある質問への即答:保険の扱い、料金、営業時間、駐車場、着替えの有無、1回の所要時間、交通事故の相談窓口
  • 予約の一次受付:空いている枠を出して、名前と連絡先を受け取るところまで
  • 営業時間外の受け皿:夜に痛みが出て検索した人を、翌朝の予約につなぐ

逆に、院に残すものもはっきりしています。症状の相談、保険が使えるかどうかの判断、施術方針の説明です。ここは資格を持った人が問診をして決めることで、機械が肩代わりしてよい部分ではありません。同じ線引きは整体院のチャットボット活用ガイドでも書きましたが、保険を扱う整骨院では境界がより明確です。

この3つを渡すだけでも、鳴る電話の中身は変わります。残るのは「今日これから空いていますか」のような、その場で判断が要る電話です。電話そのものを減らす考え方は電話対応を減らす方法にまとめています。

AI相談窓口botが整骨院でできること

私たちが提供しているAI相談窓口botは、答えを作らずに選ぶ方式です。院が登録した文章の中から返すので、保険の説明は毎回同じ言い回しになります。書いていないことは答えません。

言葉の揺れは学習で吸収します。「保険きく?」「保険適用されますか」「健康保険つかえますか」は、どれも同じ質問として同じ答えにたどり着きます。

予約もそのまま受け付けられます。Googleカレンダーとつないで空き枠を出し、二重予約を防ぎ、前日にリマインドを送ります。キャンセルは確認画面つきの専用ページから受け付けるので、誤操作で枠が消えることもありません。予約機能でできることは別の記事で詳しく書いています。

答えられなかった質問は、翌朝メールで届きます。届いた質問に答えを足していけば、ボットは使いながら育ちます。最初から全部の質問を用意する必要はありません。

料金は初期費用50,000円、月額5,000円(いずれも税込)です。設置はサイトに1行貼るだけで、Q&Aはご自身で編集できます。

できないことも書いておきます。症状の相談には答えられません。保険が使えるかどうかの判断もしません。そこは問診で院長が確認する前提の設計です。

まとめ

整骨院でチャットボットに任せるのは、施術でも保険の判断でもありません。よくある質問への即答、予約の一次受付、営業時間外の受け皿の3つです。

そして「保険は使えますか」への答えは、事実・線引き・次の行動の3行を先に決めておくことです。答えを用意しておけば、うそをつかずに、施術の手を止めずに、予約まで運べます。